社会福祉法人 姫路潮会

一人ひとりを大切にともに生きる

ASD(自閉スペクトラム症)の子どもをお持ちの保護者の皆様方へ

自閉症スペクトラムや、アスペルガー障害等があります。脳の中枢神経系の障害が推測されており、育て方によるものではありません。その多くの方々が、多くの困難を抱えながら生きておられます。

 

1.当法人の方針

当法人は、重度の知的障害者の保護者が「ハコ(家)とハコ(学校・施設等)の往復だけでない人生」を目指し立ち上げました。社会の中で楽しい人生を送ることを目的としてきたのです。

その為に心のバリアフリー等、障害のある方々も生きやすい社会になるよう「社会に働きかける」活動するのはもちろんですが、障害のある方々もできるだけ社会に添えるようにする事が社会参加の第一歩ではないかと考えました。

 

sakuraサーカスに行ってきました
sakuraサーカスに行ってきました

例えば大声を出すことが好きな方も静かに過ごせる時間が長くなると電車に乗ったりレストランで食事がしたりすることがスムーズになります。

「できること」のスキルをあげることで社会での活動範囲がぐっと広がるのです。

逆に「ダメなものはダメ」と言うことも覚えられると鬼に金棒ですね。

 

2.経験値積み上げプログラム

この方針は、ASD(自閉スペクトラム症)の方々も例外ではないと考えています。パニックを恐れ人ごみを避けていては映画館に行けません。レストランで走り回ると次回は断られるかもしれません。それでは楽しい人生とは言えないのではないでしょうか。

当法人では、先ず、人(利用者)と人(職員)との関係性を構築し、いわゆる問題行動をどうしてするのか、と言う原点を探り、障害ゆえの行動なのか性格からくる行動なのかを見極めます。その上で、ご本人や保護者の方とご相談のうえ、パニックの原因や誘因を排除してしまうのではなく、少しずつ耐性をつけられるよう経験を積み上げています(詳しくは下記をご覧下さい)。

こだわりは、少しずつパターンを崩し、なるべく生活に支障が無い形でとどめられるよう工夫しています。そして一貫して「ダメなものはダメ」を貫き、パターン化できる様にします。また、人との関わりも大切にし、協力する・状況判断して動く等の練習もしています。

BBQ
BBQ

これらの経験の積み重ねの中で、パニックやこだわりが無くなる訳ではありませんが少なくなり、比例するように自信が芽生え、落ち着きが見られ、適応能力・応用力の向上が見られます。

われわれはこれを「経験値積み上げプログラム」と呼んでいます。

 

3.見学・お問い合わせ等

経験値積み上げプログラムは自閉症へのアプローチの一つの形であり、アプローチの形を選択するのはご本人や保護者の方々です。
当法人は成人の方を対象としていますが、成長著しい子どもの頃からこのプログラムを使えば、小さな働きかけでも大きな成果が上がるのではないかと考えています。

また、子どもさんの大好きなご家族の方が働きかけてくださるのが最も効率的なのではないかとも考えています。

経験値積み上げプログラムにご興味があればどうぞご連絡ください。

入所式
入所式
活動プログラム
活動プログラム

これらの経験の積み重ねの中で、パニックやこだわりが無くなる訳ではありませんが少なくなり、比例するように自信が芽生え、落ち着きが見られ、適応能力・応用力の向上が見られます。

われわれはこれを「経験値積み上げプログラム」と呼んでいます。

 

4.実例

a.Yさん

特別支援学校卒業当時、スケジュールにこだわりがあり、施設でも日課を視覚表示していました。暖かく天気のよい日、同じ班の人が散歩に出掛ることになりました。

Yさんの日課表に散歩の項目を入れていなかったので作業を続けてもらおうとしましたが一緒に散歩に行こうとされました。自分の好きな事へのスケジュール変更は全く問題が無かったのです。

その後暫くし、日課の視覚表示は無くても、また突然の日課変更にも対応できる様になりました。バス旅行等の行事はカレンダーでの確認を行っていましたが、変更時は次の予定日をしっかり伝えることで「変更があってもいつかは必ずいける」と言う安心感を持っていただけるようになり、カレンダーも不必要になりました。

食事にもこだわりがあり、母親の作った食事(ほとんどご飯・カラアゲ・鮭のみ)しか口にできませんでしたが、盛り付ける量を食べられる量だけとし、完食する経験を積みながら量を増やすことで、現在ではみんなと同じ量を食べておられます。

その場にいる人々の行動が同じでないと嫌、と言う一面もありました。例えば喫茶店で、出された水を全員が飲まないと気が済まず、催促をされるのです。「人にはそれぞれ思いやタイミングがあり、みんなが同じではない」事を伝え続けることで以前ほど催促されることはなくなりました。

現在、自傷他傷を含むパニックの回数が激減し、親指や手首にある噛み傷の色が変わってきました。みんなと一緒に映画やカラオケ・テーブルマナーなども楽しんでおられます。

 

b.Kさん

トイレにこだわりがある方です。尿意に関わり無く気持ちがトイレに向いてしまい、トイレにこもってしまわれることも度々ありました。施設では、ほぼ1時間半毎にある休憩時にトイレに行ってもらうこととし、作業中はなるべく我慢してもらうようにしました。徐々に作業中のトイレの回数が減り、トイレの所要時間も短くなりました。同時に、不安定さが無くなり、落ち着いて過ごすことができる様になっておられます。

 

c.Fさん

好き嫌いが激しく、食事への意識も低く、食事時間中は箸で食事をつついて遊んでばかりでした。まず、ご飯で遊ばないことを伝え、食べたくない時には遊ばずに片付けてもらいました。次に、比較的食べやすかったご飯の量を徐々に増やし、おかずも一口ずつ増やすようにしました。同時に、口に入れる量を「ほんの少し」から適切な量に増やしました。特別支援学校の先生が吃驚されるほど成長されました。

 

d.Tさん

指示待ちの方です。食事時なども「ハイご飯食べて」「次はおかず」とこと細かく声掛けが必要でした。作業中もその都度止まってしまわれます。少しずつ声掛けを減らすことで、現在は「次は何をするの?」と尋ねると自分で答えながら動けるようになっておられます。慣れた作業は報告も含めた一連の動作がパターン化でき、止まる事無く作業をしておられます。また、入荷・出荷時には荷物の量や携わる人数などの状況を判断しながら動いておられます。

 

e.歌

当施設では、入所式や納涼会・クリスマス会など多くの行事においてみんなで歌を歌います。自閉症の方々も例外ではありません。私たちには見慣れた光景なのですが、自閉症の方々がみんなと一緒に歌(自分の好きな歌ではなく決められた歌)を歌うという光景はあまり無いそうです。

 

d.ぬか叩き

当施設の授産商品のぬか漬けの素「ぬかちゃん」の仕上げ工程です。空気を抜き塊となったぬかを叩いて平らに仕上げます。この「平ら」と言う概念が自閉症の方々には理解し難いのですが、具体的に高いところ低い所を伝えることで皆さんとても上手に仕上げておられます。仕上がりの判断も自分でされますよ。

 

e.就Bでの取り組み

当施設では○○班等の決まった作業はありません。その時々でみんなが様々な作業をします。自分で選べるわけではなく、得手不得手や作業ペースを考慮しながら職員が作業を組み立てます。急ぎの作業が入荷すると、途端に作業が変更になります。初めは今までしていた作業に執着する方もおられますが、経験を積むことによって状況の変化に対応できるようになっておられます。

作業の様子
作業の様子
あじさい鑑賞
あじさい鑑賞

 

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